八卦の中で、雷(震)と山(艮)の組み合わせは、動きと制御の関係を象徴します。
雷は勢いよく動き出す力を持ち、山は静かに止まる力を持つ。
この二つが組み合わさると、行動力と慎重さのバランスを学ぶことができます。
つまり、ただ突き進むのではなく、止める力を意識することで、物事はより確実に進むのです。
この卦の組み合わせである、山雷頤(さんらいい)と雷山小過(らいざんしょうか)も解説していきます。
艮と震の相性と山雷頤、雷山小過の解説
易では乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の八卦の組み合わせで卦を立てて占いを行います。
八卦は擬人化されているのでその人の性質がわかると、より相性をよりイメージしやすくなります。
さらに、卦の構造の上卦と下卦の違いも、この卦が良いものか悪いものかがわかってくるのです。
艮と震の相性は?
艮は山を象徴し、静止・忍耐・安定・境界を表します。
外の動きに惑わされず、しっかりと自分の位置を保つ「止まる力」の象徴です。
熟考し、焦らずに時を待つ姿勢は、混乱の中でも冷静さを保つ強さを示します。
ただし、止まりすぎると保守的になり、チャンスを逃すこともあるため、柔軟さが鍵となります。

震は雷を象徴し、勢い・変化・行動力・驚きを表します。
突然の衝撃や新しい動きを起こすエネルギーを持ち、人々を目覚めさせる力です。
「まず動く」「思い立ったら即行動」が得意で、改革や挑戦の象徴でもあります。
ただし勢いが強すぎると、焦り・不安・衝動的な行動に走る危うさもあります。

震(雷)の勢いと艮(山)の静止は、動と静の絶妙な均衡を作り出す関係です。
雷が突き進むとき、山がブレーキをかけ、山が固まりすぎると雷が道を切り開く。
つまり、互いに欠点を補い合いながら、衝動に知恵を、静止に活力を与える関係です。
この二つが調和すると、力強さと安定感を兼ね備えた現実的な成功が得られます。
上卦ー山(艮)、下卦ー雷(震) 山雷頤とは?


山雷頤は26山天大畜の次の27番目の卦であり、上卦ー艮☶✕下卦ー震☳の2陽4陰となっています。
互卦は坤為地、綜卦は山雷頤、裏卦は沢風大過となっています。
頤とは口やアゴをさしていて、養うことと自己管理をテーマとしています。
人間関係だと誰と関わるかによって人生の糧にも毒にもなります。
卦辞の原文
頤、貞吉。観頤自求口実。
卦辞の翻訳
頤(おとがい)は、正しければ吉。養うとは、自らの口で糧を求めるように、自主的に選び取ることが大切。他人の意見ではなく、自分の判断で「何を取り入れるか」を見極めるべし。
山雷頤の爻辞
初九:舎爾霊亀、観我朶頤。凶。
意味:あなたの霊亀(知恵)を捨て、他人のやり方を真似る。凶。自分の信念を見失うな。
之卦:山地剥
六二:顛頤、払経于丘頤。征凶。
意味:上下を逆にし、筋を違えて丘の上の食を求める。無理に進めば凶。目上に逆らう愚かさ。
之卦:山択損
六三:払頤。貞凶。十年勿用。无攸利。
意味:養い方を誤る。正しても凶。十年用いることなかれ。どこにも利なし。迷い続ける時期。
之卦:山火賁
六四:顛頤。吉。虎視眈眈、其欲逐逐、无咎。
意味:逆転して養う。吉。虎のように鋭く観察し、目的を持って動けば咎なし。
之卦:火雷噬嗑
六五:払経。居貞吉。不可渉大川。
意味:道を正して守れば吉。ただし、大きな冒険(大河を渡る)は避けよ。慎重な判断を。
之卦:風雷益
上九:由頤。厲吉。利渉大川。
意味:自らの力で養う。危険はあるが吉。大きな挑戦に利あり。リーダー的立場で動く時。
之卦:地雷復
上卦ー雷(震)、下卦ー山(艮) 雷山小過とは?


雷山小過は61風沢中孚の次の62番目の卦であり、上卦ー震☳✕下卦ー艮☶の2陽4陰となっています。
互卦は沢風大過、綜卦は雷山小過、裏卦は風沢中孚となっています。
この卦は小さな過ちは許されるが大事をすることは戒められています。
大きな挑戦や大事について占ってこれが出ると、強制ストップすることになるため止めないといけません。
リスクを避けながら小さな調整していく時期となるのです。
卦辞の原文
小過、亨。利貞。可小事、不可大事。飛鳥遺之音。不宜上、宜下。大吉。
卦辞の翻訳
小過(しょうか)は通じる。正しければ利あり。小さなことには良く、大きなことには不向き。飛ぶ鳥が声を残すように、控えめに行うほど吉。上(高望み)は避け、下(足元)を大切にすべし。大吉。
雷山小過の爻辞
初六:飛鳥以凶。
意味:鳥が飛び立つように軽率に動けば凶。時期を誤る行動。
之卦:雷火豊
六二:過其祖、遇其妣。不及其君、遇其臣。无咎。
意味:祖(先人)を越え、母に会う。上に届かず、下の者に出会う。謙虚にして咎なし。
之卦:雷風恒
九三:弗過防之、従或戕之。凶。
意味:越えすぎずに守る。従えば害を受ける。軽挙妄動は凶。周囲の影響に注意。
之卦:雷地豫
九四:无咎。弗過遇之。往厲。必戒。勿用永貞。
意味:咎なし。越えずに遭う。行けば危うし。慎みを忘れるな。長く固執するな。
之卦:地山謙
六五:密雲不雨。自我西郊。公弋取彼在穴。
意味:厚い雲があれど雨降らず。我が西の郊外より、公(おおやけ)が鳥を射て穴にあるものを得る。努力は見えずとも実を結ぶ。
之卦:沢雷隨
上六:弗遇過之。飛鳥離之。凶。之謂災眚。
意味:会わずに過ぎる。鳥が飛び去る。凶。これを災いという。焦りはチャンスを逃す。
之卦:火山旅
山(艮)と雷(震)の相性と山雷頤、雷山小過の解説のまとめ
今回は、山(艮)✕雷(震)の相性と、この組み合わせの卦である山雷頤と雷山小過の解説をしました。
周易が難しいところは64卦の卦辞と爻辞は原文が漢文であり、翻訳にも諸説があって、それが難易度を上げています。
また、実際に占ってみて結果が出たあとで卦辞と爻辞を「これどうやって当てはめるの?」って困る場面が多いですよね。
卦辞と爻辞を丸暗記すること自体あまり意味がなくて、構成している八卦の相性や動きをイメージすることで、吉凶をより直感的に判断しやすくなると思います。


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