人生には、「立ち止まって考えるとき」と「見通しを立てて進むとき」があります。
八卦でいえば「山(艮)」と「火(離)」の組み合わせが、まさにその対比を象徴しています。
山は静止と内省、火は知性と洞察。
この二つが交わるとき、人は「外見を整える美」と「内側を磨く深み」の両方を求めるようになります。
今回は、艮と離の性質、そしてその相性から生まれる卦「山火賁(さんかひ)」と「火山旅(かざんりょ)」を見ていきましょう。
艮と離の相性と山火賁、火山旅の解説
易では乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の八卦の組み合わせで卦を立てて占いを行います。
八卦は擬人化されているのでその人の性質がわかると、より相性をよりイメージしやすくなります。
さらに、卦の構造の上卦と下卦の違いも、この卦が良いものか悪いものかがわかってくるのです。
艮と離の相性は?
艮は「山」を象徴し、止まる・守る・境界を保つ性質を持ちます。
思慮深く慎重で、軽率に動くことを嫌います。
人としてはマイペースで芯が強いタイプ。
静かな場所を好み、自分のペースを乱されることを嫌う一方で、精神的には非常に安定しています。
ただし、あまりに頑固になると他人との距離を生むことも。
「動かざること山のごとし」という言葉が、まさに艮の本質です。

離は「火」を象徴し、明るさ・知恵・洞察力・芸術性を意味します。
人としては聡明で観察力に優れ、何事にも美意識や理想を持ち込みます。
直感や感性が鋭く、状況を瞬時に読み取ることが得意です。。
ただし、光のように広がる一方で、持続力に欠ける面もあります。
また、感情が燃え上がりやすく、時に冷静さを失うことも。
「光を放つ知性」が離の象徴です。

山と火の組み合わせは、静と動・内省と表現の対比。
一見すると噛み合わないようで、実は「理想と現実のバランス」を取る関係です。
艮が地に足をつけ、離がそこに光を当てることで、形と意味の両立が生まれます。
ただし、艮が動かず、離が焦ると衝突します。
艮は離の気まぐれを理解し、離は艮の沈黙の奥にある誠実さを尊重できれば、互いに成長できる組み合わせ。
この二者が調和すると、「美を通して心を磨く(賁)」や「旅を通して自分を見つめる(旅)」といった深いテーマが浮かび上がります。
上卦ー山(艮)、下卦ー火(離) 山火賁とは?


山火賁は21火雷噬嗑の次の22番めの卦であり、上卦ー艮☶✕下卦ー離☲の3陽3陰となっています。
互卦が雷水解、綜卦が火雷噬嗑、裏卦が沢水困となっています。
この卦は山に沈む夕日を表していて、外見を着飾ることを示しています。
しかし、上辺だけを取り繕って内面が伴わないことを戒めています。
爻が進むごとに着飾る規模が大きくなりますが、上爻では究極の美とは「飾らないこと」と哲学を感じますね。
卦辞の原文
賁、亨。小利有攸往。
卦辞の翻訳
飾ること(賁)は通じる。
ただし、慎みをもって進むことが小さく利あり。
見た目を整えることは悪くないが、派手さを求めすぎず中庸を保てば吉。
山火賁の爻辞
初九:賁其趾。舎車而徒。
意味:足もとを飾る。車を捨てて徒歩で進む。派手な装いをやめ、質素に行くのが正しい。
之卦:艮為山
六二:賁其須。
意味:ひげを飾る。外見を整える程度なら問題なし。過剰な虚飾は慎むこと。
之卦:山天大畜
九三:賁如、濡如。永貞吉。
意味:潤いある美しさを保つ。長く正しさを貫けば吉。飾りは内面の誠から生まれるもの。
之卦:山雷頤
六四:賁如、皤如。白馬翰如。匪寇婚媾。
意味:飾り気はあるが清らか。白馬が駆けるように明るい交わり。敵ではなく良縁の兆し。出会い・協力に恵まれる。
之卦:離為火
六五:賁于丘園。束帛戔戔。吝終吉。
意味:丘や庭を飾る。贈り物は質素でも心がこもっていれば吉。見た目より誠意が大切。
之卦:風火家人
上九:白賁。无咎。
意味:白の飾り。質素で潔白。咎なし。究極の美は「飾らぬこと」にある。
之卦:地火明夷
上卦ー火(離)、下卦ー山(艮) 火山旅とは?


火山旅は55雷火豊の次の56番めの卦であり、上卦ー離☲✕下卦ー艮☶の3陽3陰となっています。
互卦が沢風大過、綜卦が雷火豊、裏卦が水沢節です。
火山旅は旅ということですが、楽しい旅とはちょっと違います。
放浪や単身上京、単身赴任、出稼ぎ、留学など故郷を離れて不安に満ちた旅路を表しています。
しかし、一見ネガティブなイメージがありますが、新天地での修行による挑戦や修行といった成長することを指しています。
卦辞の原文
旅、小亨。旅貞吉。
卦辞の翻訳
旅は少し通じる。旅の道を正しく保てば吉。
慣れぬ地での行動には慎みが肝心。誠実であれば幸運がついてくる。
火山旅の爻辞
初六:旅瑣瑣。斯其所取災。
意味:旅先で小事にこだわりすぎると災いを招く。心を広く保て。
之卦:離為火
六二:旅即次、懐其資、得童僕貞。
意味:旅の宿に落ち着き、財を守り、従者を得る。正しければ吉。安定した旅立ち。協力者にも恵まれる。
之卦:火風鼎
九三:旅焚其次、喪其童僕。貞厲。
意味:旅の宿が焼け、従者を失う。正しくても危うい。思わぬ災難の兆し。慎重さを忘れずに。
之卦:火地晋
九四:旅于処、得其資斧。我心不快。
意味:旅の途中で資金や道具を得るが、心が晴れない。目的を見失うと不満が残る。
之卦:艮為山
六五:射雉、一矢亡。終以誉命。
意味:雉を射て矢を失うが、最終的に名誉を得る。一時の損はあっても、最後は評価される。
之卦:天雷无妄
上九:鳥焚其巣。旅人先笑、後号咷。喪牛于易。凶。
意味:鳥が巣を焼かれるように、居場所を失う。旅人は初め笑うが、のちに泣く。財を失い、凶。最後まで油断禁物。
之卦:雷山小過
山(艮)と火(離)の相性と山火賁、火山旅の解説のまとめ
今回は、山(艮)✕火(離)の相性と、この組み合わせの卦である山火賁と火山旅の解説をしました。
周易が難しいところは64卦の卦辞と爻辞は原文が漢文であり、翻訳にも諸説があって、それが難易度を上げています。
また、実際に占ってみて結果が出たあとで卦辞と爻辞を「これどうやって当てはめるの?」って困る場面が多いですよね。
卦辞と爻辞を丸暗記すること自体あまり意味がなくて、構成している八卦の相性や動きをイメージすることで、吉凶をより直感的に判断しやすくなると思います。

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