今回は、兌(たく)と巽(そん)の組み合わせを見ていきます。
兌は喜びや楽しさ、巽は風のように柔軟で進展する性質を持ちます。
この二つが絡むと、柔らかさと明るさの中で物事が進む力が生まれます。
そして、卦は「沢風大過」と「風沢中孚」を使い、行動の大胆さと信頼の重要性をテーマに読み解きます。
兌と巽の相性と沢風大過、風沢中孚の解説
易では乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の八卦の組み合わせで卦を立てて占いを行います。
八卦は擬人化されているのでその人の性質がわかると、より相性をよりイメージしやすくなります。
さらに、卦の構造の上卦と下卦の違いも、この卦が良いものか悪いものかがわかってくるのです。
兌と巽の相性は?
兌(沢)は、喜びや楽しさを象徴する卦で、人を和ませる魅力や周囲に明るさをもたらす力を持っています。
感情を素直に表現し、楽しむことができるため、周囲との関係を円滑にし、人々の心を引きつけることに長けています。
また、物事を柔らかい視点で見ることができるため、緊張した場でも和やかさを作り出すことができます。
しかし、その反面、快楽や楽しさに偏りすぎると、軽薄になったり深みを欠いたりする危険もあります。
物事の本質を見落としやすくなるため、注意が必要です。

一方、巽(風)は柔軟性や順応性に優れた卦で、情報や言葉を通して周囲に影響を与えながら、物事を穏やかに進展させる力を持っています。
状況に応じて態度や方法を変え、周囲と調和しながら目的を達成する能力が高く、交渉や調整、組織内での立ち回りにも強さを発揮します。
ただし、あまりにも流されやすい面があり、自分の軸を見失いやすいという短所もあります。
自分の意志や判断をしっかり持たないと、他者に引きずられたり、本来の目標を見失ったりすることもあります。

この兌と巽が組み合わさると、喜びや楽しさの力と柔軟な進展力が融合し、互いの長所を補い合う関係が生まれます。
例えば、兌の明るさや社交力を巽が広め、巽の柔軟な行動力や調整力を兌が後押しすることで、対人関係や情報のやり取り、交渉の場などで大きな成果を上げることができます。
さらに、どちらも軽やかで流動的な性質を持つため、状況に応じて臨機応変に動きながら、楽しみや喜びを周囲に広めることが可能です。
ただし、両者とも軽やかさや柔軟さが強いので、時には慎重さや堅実さを意識しないと、軽薄になったり優柔不断になったりする危険もあります。
バランスを意識して、楽しみながらも適切な判断を維持することが重要です。
上卦ー沢(兌)、下卦ー風(巽) 沢風大過とは?


沢風大過は27山雷頤の次の28番目の卦であり、上卦ー兌☱✕下卦ー巽☴の4陽2陰となっています。
互卦は乾為天、綜卦は同じ沢風大過、裏卦は山雷頤となります。
この卦は上下が陰であり中4つが陽であり、中がスカスカで家の梁がたわんでいる危険な状態を示しています。
その状態のとおり、無理をしていることを暗示しています。
卦辞の原文
大過、棟橈。利有攸往。亨。
卦辞の翻訳
大過(大きく越える)は、棟橈(棟木がたわむような状況)を象徴する。
行動することで吉がある場合もあるが、バランスを崩せば危険。慎重に進むことで亨(通じる)となる。
過ぎる行動や無理は避け、適切な判断で行動せよ。
沢風大過の爻辞
初六:藉用白茅。无咎。
意味:白茅(細い草)に頼る。小さな手段を使えば問題なし。
之卦:沢天夬
九二:枯楊生稊、老夫得其女妻。无不利。
意味:枯れた楊が芽を出すように、古いものから新しい機会が生まれる。年長者が若い女性を得るような吉。損なし。
之卦:沢山咸
九三:棟橈。凶。
意味:棟木がたわむ。大きく無理をすると凶。
之卦:沢水困
九四:棟隆。吉。有它吝。
意味:棟木は隆盛して吉。ただし、他のことで小さな不利あり。
之卦:水風井
九五:枯楊生華、老婦得其士夫。无咎无誉。
意味:枯れた楊に花が咲くように、年長の女性が若い男性を得る。咎なしだが、特別な称賛もなし。
之卦:雷風恒
上六:過渉滅頂。凶。无咎。
意味:大河を渡りきれず、頭まで水に浸かる。危険。慎重であれば咎なし。
之卦:天風姤
上卦ー風(巽)、下卦ー沢(兌) 風沢中孚とは?


風沢中孚は61風沢節の次の62番目の卦であり、上卦ー巽☴✕下卦ー兌☱の4陽2陰となっています。
互卦は山雷頤、綜卦は同じ風沢中孚、裏卦は雷山小過となります。
この卦の中孚とは「誠実さ・信頼・約束を守る力」となります。
誠実であれば吉ですが、過信や油断は凶につながることがあります。
相手や状況に応じて柔軟に対応することも大切です。
卦辞の原文
中孚、豚魚吉。利渉大川。利貞。
卦辞の翻訳
中孚(誠実で信頼できる心)は、豚や魚の吉にたとえられる。
大河を渡るのに利あり。誠意を持てば成功し、信頼関係が物事を通じさせる。
風沢中孚の爻辞
初九:虞吉。有它不燕。
意味:心配しても吉。他のことに気を取られず、落ち着いて対応せよ。
之卦:風水渙
九二:鳴鶴在陰、其子和之。我有好爵。吾与爾靡之。
意味:陰に鳴く鶴。その子が和する。良い爵位を得るが、過信せず分かち合え。
之卦:風雷益
六三:得敵。或鼓或罷、或泣或歌。
意味:敵と遭遇する。戦いもあれば休戦もあり、泣くことも歌うこともある。状況次第で吉凶が分かれる。
之卦:風天小畜
六四:月幾望。馬匹亡。无咎。
意味:月が満ちかけるように、物事は少し欠けても吉。失うものはあれど咎なし。
之卦:天沢履
九五:有孚攣如。无咎。
意味:誠意を持って縛りつけるように信頼を守る。咎なし。
之卦:山択損
上九:翰音登于天。貞凶。
意味:鳴き声が天に届く。正しく行動しても凶。過信や傲慢を戒める。
之卦:水沢節
沢(兌)と風(巽)の相性と沢風大過、風沢中孚の解説のまとめ
今回は、沢(兌)✕風(巽)の相性と、この組み合わせの卦である沢風大過と風沢中孚の解説をしました。
周易が難しいところは64卦の卦辞と爻辞は原文が漢文であり、翻訳にも諸説があって、それが難易度を上げています。
また、実際に占ってみて結果が出たあとで卦辞と爻辞を「これどうやって当てはめるの?」って困る場面が多いですよね。
卦辞と爻辞を丸暗記すること自体あまり意味がなくて、構成している八卦の相性や動きをイメージすることで、吉凶をより直感的に判断しやすくなると思います。


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