人生の流れがスムーズにいく時もあれば、思うように進まない時もあります。
そんな運の盛衰を象徴するのが、天・地(乾・坤)の組み合わせです。
乾(天)は創造・行動・決断を司る「陽の極み」。
坤(地)は受容・柔順・育成を象徴する「陰の極み」。
この二つの卦が出会うとき、そこには「すべての始まり」と「すべての停滞」という両極の意味が現れます。
上が地で下が天なら「地天泰(ちてんたい)」、天地が通じてすべてが調和する時。
反対に上が天で下が地となると「天地否(てんちひ)」、天地が交わらず通じない時。
つまりこのペアは、運の流れそのものを映し出す鏡のような関係なのです。
今回は、陰陽の究極ペアである「乾」と「坤」の相性、そして「天地否」「地天泰」という二つの卦について詳しく見ていきます。
坤と乾の相性と地天泰、天地否の解説
易では乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の八卦の組み合わせで卦を立てて占いを行います。
八卦は普段あまり馴染みのない字を使われていることから、擬人化して考えることでイメージしやすいです。
さらに、卦の構造である上卦と下卦でも、この卦のことがわかってくるのです。
八卦の地(坤)と天(乾)の相性は?
地(坤)は五行で「土」に属し、擬人化すると母親や大地のように包み込む存在にあたります。
柔らかく穏やかで、他者を受け入れ、支える力に優れているのが大きな特徴です。
また、忍耐強く、周囲の状況を見極めながら堅実に物事を進めていく姿勢があります。
ただし、その優しさや受容性が強く出すぎると、受け身になりやすく、自分の意見を抑え込んでしまうこともあります。
また、変化を恐れてチャンスを逃す場合もあるため、時には自ら動く勇気も必要です。
総じて、地(坤)は包容力と安定感を武器に、信頼関係を築くことで力を発揮するタイプです。
「受け身の強さ」を理解し、柔軟さの中に主体性を持つことで、真の豊かさを得ることができるでしょう。

天(乾)は五行で「金」に属し、擬人化すると父親や社長など、リーダーとして周囲を導くタイプにあたります。
行動力と決断力に優れ、物事を率先して進める力を持つのが大きな特徴です。
また、強い信念と責任感を持ち、どんな状況でも周囲を引っ張っていく統率力があります。
ただし、その自信の強さが裏目に出ると、プライドが高くなりすぎたり、他人の意見を聞かずに独断で進めてしまうことも。
結果として、部下や仲間に厳しくなりすぎたり、孤立を招くこともあるでしょう。
総じて、天(乾)は決断力やリーダーシップを武器にしながらも、柔軟さと周囲への思いやりを持つことで、より大きな成功をつかめるタイプと言えます。

天(乾)と地(坤)の相性は、易の世界では「天地定位(てんちじょい)」と呼ばれ、非常に象徴的な関係です。
乾が「天」であり、陽の極み・創造・リーダーシップを表すのに対し、坤は「地」であり、陰の極み・受容・包容力を示します。
この二つは正反対の性質を持ちながらも、互いを補い合う理想的な関係です。
乾が「指導する側」「動かす側」であれば、坤は「受け入れる側」「支える側」となり、両者のバランスが取れているとき、物事は最も安定し、大きな成果を生み出します。
ただし、乾が強すぎると独断的になり、坤が押しつぶされてしまう危険があります。逆に、坤が強すぎると受け身になりすぎて、乾の意志が発揮されにくくなります。
そのため、乾は謙虚さを、坤は主体性を意識することが、良好な関係を保つ鍵です。
上卦ー地(坤)、下卦ー天(乾) 地天泰とは?
地天泰は10天沢履の次の11番目の卦であり、上卦ー坤☷✕下卦ー乾☰の3陽3陰となっています。
この卦の構造が上が坤で下に向かっていて、下の乾は上に向かっています。
泰という字から泰平といった穏やかなものをイメージしますが、上下で地と天が交わっていて混沌が起こっていて意外と穏やかではありません。
例えば、わざとに混乱を起こして火事場泥棒の如く何かを手に入れる行為や、体制を立て直すために混乱を引き起こすといったことになります。
字面のイメージと起こっている出来事の差が激しいものでもあります。
卦辞の原文
泰、小往大来。吉。亨。
卦辞の直訳
小さなものは去り、大きなものがやって来る。吉。物事が順調に通る。
地天泰の爻辞
初九:抜茅茹。以其彙。征吉。
意味:茅を抜いて束ねるように、仲間をまとめて行動すれば吉。
九二:包荒、用馮河、不遐遺、朋亡、得尚于中行。
意味:荒れた土地を包み込み、河を渡るように行動する。遠くに遺すことなく、仲間を失っても中央を守れば吉。
九三:无平不陂、无往不復。艱貞无咎。勿恤其孚。于食有福。
意味:平らかでないものは傾き、進めば必ず戻る。困難に正しく堅持すれば咎なし。信頼を心配せず、食に福あり。
六四:翩翩。不富以其隣。不戒以孚。
意味:身の程を守り隣人と協調する。用心せずとも誠実であれば吉。
六五:帝乙帰妹。以祉元吉。
意味:帝乙が妹を迎えるように、喜びが訪れ、吉。
上六:城復于隍。勿用師。自邑告命。貞吝。
意味:城は壕に戻る。軍を使うな。自らの邑で命令を告げる。正しくしても苦しみあり。
上卦ー天(乾)、下卦ー地(坤) 天地否とは?
天地否は11地天泰の次の12番目の卦であり、下卦ー乾☰✕上卦ー坤☷の3陽3陰となっています。
構造は地天泰を上下逆にした形であり、天は上を向かって、地は下に向かっていてお互いが離れていく流れとなっています。
地天泰とは逆で、組織から離れて独りでどうにかしようとする姿勢となります。
組織に関する占いでこれが出た場合は、組織の分裂や分断が起こる暗示となり、仕事運の場合は組織からの孤立や独立を起こり得ることになります。
卦辞の原文
否之匪人。不利君子貞。大往小来。
卦辞の直訳
人が通じない状態。君子の正しさは利益にならず。大きなものは去り、小さなものが来る。
天地否の爻辞
初六:抜茅茹。以其彙。貞吉。亨。
意味:茅を抜きまとめるように、仲間とともに慎重に行動すれば吉。順調に進む。
六二:包承。小人吉、大人否。亨。
意味:包み支えるように受け入れる。小さな者には吉、大きな者には否。順調に進む。
六三:包羞。
意味:恥を包み隠す。行動には注意が必要。
九四:有命无咎。疇離祉。
意味:命に従えば咎なし。周囲と協調すれば幸。
九五:休否。大人吉。其亡其亡、繋于苞桑。
意味:否を休むことで、大人には吉。失うものは失い、桑に結ぶ。
上九:傾否。先否後喜。
意味:否が傾く。最初は困難だが、後に喜びが来る。
坤と乾の相性と地天泰、天地否の解説のまとめ
今回は、地(坤)✕天(乾)の相性と、この組み合わせの卦である地天泰と天地否の解説をしました。
周易が難しいところは64卦の卦辞と爻辞は原文が漢文であり、翻訳にも諸説があって、それが難易度を上げています。
また、実際に占ってみて結果が出たあとで卦辞と爻辞を「これどうやって当てはめるの?」って困る場面が多いですよね。
卦辞と爻辞を丸暗記すること自体あまり意味がなくて、構成している八卦の相性や動きをイメージすることで、吉凶をより直感的に判断しやすくなると思います。
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